「人魚の涙」真珠 | パールの歴史やコーディネートのポイント

フェミニンな優しい輝きを湛える真珠（パール）。潤いのある美しい光沢から、「月のしずく」や「人魚の涙」とも呼ばれる6月の誕生石です。
宝石と言っても、ダイヤモンドやルビーのように地球の地中深くで出来る鉱物ではなく、海や湖にいる貝の体内で生成されます。
磨かなくても美しく輝いている真珠は、まさに天から落とされた輝きの雫のようです。

■ パールの歴史

海からの美しい贈り物であるパールは、古くから宝飾品または薬として珍重されていました。
王冠やドレスなど、古代権力者の装飾品に散りばめられたパールは博物館などでも多く見られます。
パールは宝飾品としてだけではなく、古代エジプトの女王クレオパトラや中国の西太后はパールを粉末にして美容のために飲んでいたほどで、美肌・美白に有効ともされています。
養殖技術が確立されるまでは、天然の貝の中から稀に発見できる程度の大変希少な宝石だったため、一部の権力者しか手にすることができませんでした。
養殖技術を確立したのは明治時代の日本人、御木本幸吉で真珠王とも呼ばれました。
御木本幸吉が確立した真珠養殖により、パールジュエリーは一般的なものとなり女性を虜にしています。
そして、御木本幸吉が創業した現ミキモトは、現在でも真珠の販売シェア世界一を誇っています。

■ パールの種類

パールは大きく分けて2種類、海に住む貝から採れる海水パールと、湖や川の貝から採れる淡水パールがあります。

パールは、母貝が異物から自身を守るために、異物の周りに真珠層を分泌して出来ます。海水パールは、貝殻やプラスチックを真円にした核と細胞片を母貝に挿入して養殖します。真円の核を入れるので、真円のパールができやすく、1～3年の養殖期間を要します。

淡水パールは核は入れずに細胞片のみ挿入し、大きいものは7～8年の養殖期間が必要です。核を入れる海水パールに比べて真円のパールができにくく時間もかかります。以前は、淡水パールと言えば形が不揃いなライスパールが一般的だったために、海水パールに比べて安価で粗悪なイメージを持つ方もいらっしゃいますが、最近では傷がなく形の整った高品質の淡水パールも産出されるようになりました。海水パールも淡水パールも品質が多岐に渉るため、種類によっての価値判断は難しく、真珠個々の品質による評価が必要です。

海水パール
[有核真珠：母貝にピース(細胞片)と真円の核(貝殻やプラスチック製)を挿入してその上に真珠層を巻かせている。]

淡水パール
[無核真珠：母貝にピース(細胞片)のみ挿入し、真珠層を巻かせた真珠。]

・アコヤ真珠

日本近海に生息するアコヤ貝から採れる真珠で「和珠」とも呼ばれ、万葉集にも詠まれるほど日本では古くから愛されている真珠です。御木本幸吉が開発した真珠養殖はアコヤ真珠で、日本で採れる代表的な宝石です。代表的な産地は三重県の伊勢志摩や長崎県五島列島など。日本では冠婚葬祭に用いられる代表的なパールで、美しい艶と光沢が特徴ですが、真珠層の巻きが薄いため代々受け継ぐ場合などは大切に扱う必要があります。

・白蝶真珠（南洋真珠）

オーストラリアなど温かい海で育つ白蝶貝を母貝として採れる真珠で、10ミリ以上の大きいものも見られます。白色が一般的ですが、金色のゴールデンパールも採れます。

・黒蝶真珠（タヒチパール）

タヒチなどの温かい海で育つ黒蝶貝から採れる黒いパールで、巻きが厚く比較的大きいサイズのものも採れます。黒色の中でも、グレー、シルバー系のもの、グリーン系のものなど色味がさまざまです。「ピーコックグリーン」と呼ばれるグリーンに赤みが混じったようなクジャクの羽のような色合いが高く評価されています。

・淡水真珠

主に中国の湖や川で養殖されるヒレイケチョウ貝を母貝として採れる真珠で、色も形も多岐に渡ります。前述の通り、核を入れずに養殖するので真珠層の巻きが厚く比較的丈夫で、近年ではアコヤ真珠と見間違うような高い品質の淡水真珠も採れるようになりました。

■ パールコーディネート

・冠婚葬祭

冠婚葬祭の場ではパールジュエリーを使用される方が多いでしょう。お葬式のときには、40cm程度の白いアコヤ真珠が無難で良いでしょう。黒真珠もマナー違反ではありませんが、若い人が着けると派手に見える場合もありますのでご注意ください。また、2連着けなどは「悲しみが重なる、繰り返される」などのイメージでタブーとされています。また、9mm以上の大珠も華やかすぎるの避けるのがベターです。お祝いの席でしたら、どんなパールジュエリーでも問題なくご着用いただけます。パールの華やかな艶光沢が、お祝いの装いを一層美しく引き立ててくれます。