宝石の王者と言われるダイヤモンドは、全ての石の中で最も硬く科学的にも安定している鉱物です。今でこそダイヤモンドは世界中の様々な鉱山で採取されていますが、どのように発見されて現在のように流通するようになったのでしょうか。
ダイヤモンドやその他のジュエリーの美しさは、人類の歴史よりもはるかに長い地球の歴史が生んだ賜物と言えます。ほとんどの鉱物が地球のエネルギーによって作られていますが、火山などの地質現象によって生まれる代表的なものが水晶、トルマリン、トパーズ、エメラルド、そしてダイヤモンドです。
水晶やエメラルドは地球内部(マントル)にあるマグマの噴出によって生成されますが、ダイヤモンドだけはそれに加え高圧力が作用しています。また、トルマリンやトパーズはマグマが地球内部でゆっくりと時間をかけて冷えることでできる結晶に対して、ダイヤモンドはマグマが音速以上の噴出で地表に急上昇した際に瞬間冷凍されることによって誕生するのです。
その冷えて固まった炭素の岩をキンバーライトと言います。上昇するスピードが遅いとグラファイト(黒鉛)という鉛筆の材料となってしまいます。炭素自体は同じなのに、条件が違うだけでダイヤモンドが鉛筆になってしまうとは自然の不思議は計り知れないものですね。
ダイヤモンドの最初の発見は川の中だったと言います。ダイヤモンドに限らず多くの鉱物は高密度なため風化しにくく、岩石から分離した宝石の原石は長い年月をかけ水流で運ばれるのです。
これらの分離した鉱物を採掘するには、砂礫をざるの中に入れて水中で洗いながら宝石の原石を拾い出します。川から海へ流れ出た鉱物もあることから、海底には多くのダイヤモンドが眠っている可能性があります。
もう一方で、キンバーライトの中にあるダイヤモンドを掘削する方法もあります。非常に硬いキンバーライトに対してドリルやダイナマイトを使用して、岩石をさらに細かく砕いてダイヤモンドを採掘する方法です。
現在ではダイヤモンドの採掘はこのキンバーライトの掘削が主流となっています。
ダイヤモンド産出の分布は、ユーラシア、アフリカ、南米大陸を中心に散らばっています。
最初のダイヤモンドが発見されたとするインドでは、紀元前からダイヤモンドが知れ渡っていて18世紀ごろまで世界のダイヤモンド主要産地でした。イギリス王室が所有している伝説のダイヤモンド「コーイヌール」が発見されたのもインドで、川のほとりに捨てられていた子供の額から発見されたという言い伝えがあります。
その後、ブラジルのミナスジェライス洲で採掘作業を本格的に取り組むようになり、それまで生産量世界一であったインドを抜くようになります。
18世紀の後半になると南アフリカで最初のダイヤモンド「ユーレカ」を発見。川の中で見つかったその地域では、その後もダイヤモンドがいくつも発見され、たちまち大勢の採掘者が訪れるようになりました。
その後も南アフリカではキンバリー鉱山が発見され本格的な採掘が始まります。1874年にはキンバリー鉱山には430もの鉱区があり、「ビッグ・ホール」という巨大な坑道の中で人々はダイヤモンドを掘り続けました。最盛期には年間で100万カラット以上のダイヤモンドが産出したと言われています。キャンプ地は急速に発展し、一躍キンバリーは鉱業都市となります。
現在はロシア、カナダ、オーストラリアなどが新興の鉱山として注目されています。
日本も火山活動の多い地域ではありますが、残念ながらキンバーライトは発見されていません。ダイヤモンドを地表にもたらした噴出は現在起こっておらず、場所的にも時期的にも限定して産出された、まさに神秘の宝石と言えるのではないでしょうか。